石炭をば
早や?み果てつ。中等室の
卓のほとりはいと静にて、
?の光の晴れがましきも
徒なり。今宵は夜?にこ?に集ひ来る
骨牌仲?も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余
一人のみなれば。
五年前の事なりしが、
平生の望足りて、洋行の官命を
蒙り、このセイゴンの港まで
来し?は、目に?るもの、耳に?くもの、一つとして
新ならぬはなく、?に任せて?き
?しつる?行文日ごとに?千言をかなしけむ、当?の新?に?せられて、世の人にもてはやされしかど、
今日になりておもへば、
?き思想、身の
程知らぬ放言、さらぬも
?常の?植金石、さては?俗などをさへ珍しげにしるし?を、心ある人はいかにか?けむ。こたびは途に上りしとき、
日?ものせむとて?ひし
?子もまだ白?のま?なるは、
独逸にて物学びせし
?に、一?の「ニル、アドミラリイ」の?象をや?ひ得たりけむ、あらず、これには?に故あり。
げに
?に
?る今の我は、西に航せし昔の我ならず、学?こそ
?心に?き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の?みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ?り易きをも悟り得たり。きのふの是はけふの非なるわが瞬?の感触を、?に写して
?にか?せむ。これや日?の成らぬ?故なる、あらず、これには?に故あり。
?呼、ブリンヂイシイの港を
出で?より、早や
二十日あまりを?ぬ。世の常ならば
生面の客にさへ
交を?びて、旅の?さを慰めあふが航海の
?なるに、
微恙にことよせて
房の
?にのみ
?りて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨に
?のみ?ましたればなり。
此恨は初め一抹の?の如く
我心を
掠めて、
瑞西の山色をも?せず、
伊太利の古?にも心を留めさせず、中?は世を
?ひ、身をはかなみて、
?日ごとに九?すともいふべき惨痛をわれに?はせ、今は心の奥に凝り固まりて、一点の
翳とのみなりたれど、
文?むごとに、物?るごとに、?に映る影、声に?ずる?の如く、限なき?旧の情を?び起して、
?度となく我心を苦む。?呼、いかにしてか此恨を
?せむ。
若し
外の恨なりせば、?に?じ歌によめる後は
心地すが/\しくもなりなむ。これのみは余りに深く我心に
?りつけられたればさはあらじと思へど、今宵はあたりに人も?し、
房奴の来て ?の?を
捩るには?程もあるべければ、いで、その概略を文に?りて?む。
余は幼き
比より?しき庭の
?を受けし
甲斐に、父をば早く
?ひつれど、学?の
荒み衰ふることなく、旧藩の学?にありし日も、?京に出で?
予 に通ひしときも、大学法学部に入りし後も、太田
?太郎といふ名はいつも一?の
首にしるされたりしに、
一人子の我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。十九の?には学士の称を受けて、大学の立ちてよりその?までにまたなき名誉なりと人にも言はれ、
某省に出仕して、故?なる母を都に呼び迎へ、?しき年を送ること三とせばかり、官?の?え
殊なりしかば、洋行して一?の事?を取り?べよとの命を受け、我名を成さむも、我家を?さむも、今ぞとおもふ心の勇み立ちて、五十を
?えし母に?る?をもさまで悲しとは思はず、
?々と家を?れてベルリンの都に来ぬ。
余は
模糊たる功名の念と、?束に?れたる勉?力とを持ちて、
忽ちこの
欧?巴の新大都の中央に立てり。
何等の光彩ぞ、我目を射むとするは。何等の色?ぞ、我心を迷はさむとするは。菩提?下と?するときは、幽静なる
境なるべく思はるれど、この大道
?の如きウンテル、デン、リンデンに来て なる石だ?みの人道を行く
?々の士女を?よ。胸?り肩
?えたる士官の、まだ
?廉一世の街に?める

に
倚り玉ふ?なりければ、?々の色に?り成したる礼装をなしたる、
妍き
少女の
巴里まねびの
?したる、彼も此も目を?かさぬはなきに、?道の
土?青の上を音もせで走るいろ/\の 、?に?ゆる楼?の少しとぎれたる
?には、晴れたる空に夕立の音を?かせて
?り落つる
?井の水、?く望めばブランデンブルク?を隔て ?枝をさし
交はしたる中より、半天に浮び出でたる?旋塔の神女の像、この
?多の景物
目睫の?に
聚まりたれば、始めてこ?に
来しもの 接に
遑なきも
宜なり。されど我胸には
?ひいかなる境に?びても、あだなる美?に心をば?さじの誓ありて、つねに我を?ふ外物を
遮り留めたりき。
余が
?索を引き?らして
?を通じ、おほやけの?介状を出だして?来の意を告げし
普?西の官?は、皆快く余を迎へ、公使?よりの手つ?きだに事なく?みたらましかば、何事にもあれ、教へもし?へもせむと?しき。喜ばしきは、わが
故里にて、独逸、
西の?を学びしことなり。彼等は始めて余を?しとき、いづくにていつの?にかくは学び得つると?はぬことなかりき。
さて官事の
暇あるごとに、かねておほやけの?をば得たりければ、ところの大学に入りて
政治学を修めむと、名を
簿?に?させつ。
ひと月ふた月と?す程に、おほやけの打合せも?みて、取?も次第に
?り行けば、急ぐことをば?告?に作りて送り、さらぬをば写し留めて、つひには
をかなしけむ。大学のかたにては、?き心に思ひ?りしが如く、
政治家になるべき特科のあるべうもあらず、此か彼かと心迷ひながらも、二三の法家の
?筵に
列ることにおもひ定めて、?金を?め、往きて?きつ。
かくて
三年ばかりは?の如くにたちしが、?来れば包みても包みがたきは人の好尚なるらむ、余は父の?言を守り、母の教に?ひ、人の神童なりなど
褒むるが嬉しさに怠らず学びし?より、官?の善き?き手を得たりと
?ますが喜ばしさにたゆみなく勤めし?まで、た?所?的、器械的の人物になりて自ら悟らざりしが、今二十五?になりて、既に久しくこの自由なる大学の?に当りたればにや、心の中なにとなく
妥ならず、奥深く潜みたりしまことの我は、やうやう表にあらはれて、きのふまでの我ならぬ我を攻むるに似たり。余は我身の今の世に雄?すべき
政治家になるにも
宜しからず、また善く法典を
?じて?を断ずる法律家になるにもふさはしからざるを悟りたりと思ひぬ。
余は
私に思ふやう、我母は余を
活きたる辞?となさんとし、我官?は余を活きたる法律となさんとやしけん。辞?たらむは?ほ堪ふべけれど、法律たらんは忍ぶべからず。今までは
?々たる にも、?めて
丁?にいらへしつる余が、この?より官?に寄する?には
?りに法制の?目に
拘ふべきにあらぬを?じて、一たび法の精神をだに得たらんには、?々たる万事は破竹の如くなるべしなど 言しつ。又大学にては法科の?筵を
余所にして、?史
文学に心を寄せ、?く
蔗を
嚼む境に入りぬ。
官?はもと心のま?に用ゐるべき器械をこそ作らんとしたりけめ。独立の思想を
?きて、人なみならぬ
面もちしたる男をいかでか喜ぶべき。危きは余が当?の地位なりけり。されどこれのみにては、なほ我地位を
覆へすに足らざりけんを、
日比伯林の
留学生の
中にて、或る?力ある
一群と余との?に、面白からぬ ありて、彼人々は余を
猜疑し、又
遂に余を
するに至りぬ。されどこれとても其故なくてやは。
彼人々は余が
?に
麦酒の杯をも?げず、球突きの
棒をも取らぬを、かたくななる心と?を制する力とに?して、
且は
嘲り且は
嫉みたりけん。されどこは余を知らねばなり。?呼、此故よしは、我身だに知らざりしを、
怎でか人に知らるべき。わが心はかの
合?といふ木の?に似て、物
触れば?みて避けんとす。我心は?女に似たり。余が幼き?より?者の教を守りて、
学の道をたどりしも、
仕の道をあゆみしも、皆な勇?ありて
能くしたるにあらず、耐忍勉?の力と?えしも、皆な自ら欺き、人をさへ欺きつるにて、人のたどらせたる道を、
唯だ
一条にたどりしのみ。余所に心の乱れざりしは、外物を?て みぬ程の勇?ありしにあらず、
唯外物に恐れて自らわが手足を?せしのみ。故?を立ちいづる前にも、我が有?の人物なることを疑はず、又我心の能く耐へんことをも深く信じたりき。?呼、彼も一?。舟の横浜を?るるまでは、
天晴豪?と思ひし身も、せきあへぬ?に
手巾を濡らしつるを我れ
乍ら怪しと思ひしが、これぞなか/\に我本性なりける。此心は生れながらにやありけん、又早く父を失ひて母の手に育てられしによりてや生じけん。
彼人々の嘲るはさることなり。されど嫉むはおろかならずや。この弱くふびんなる心を。
赤く白く
面を?りて、
赫然たる色の衣を
?ひ、
珈?店に坐して客を
延く
女を?ては、往きてこれに就かん勇?なく、高き帽を戴き、眼?に鼻を?ませて、
普?西にては?族めきたる鼻音にて物言ふ「レエベマン」を?ては、往きてこれと?ばん勇?なし。此等の勇?なければ、彼活?なる同?の人々と交らんやうもなし。この交?の
?きがために、彼人々は唯余を嘲り、余を嫉むのみならで、又余を猜疑すること?なりぬ。これぞ余が
冤罪を身に?ひて、 の?に?量の
を
?し尽す
媒なりける。
或る日の夕暮なりしが、余は?苑を漫?して、ウンテル、デン、リンデンを?ぎ、我がモンビシユウ街の
?居に?らんと、クロステル
巷の古寺の前に来ぬ。余は彼の
?火の海を渡り来て、この狭く薄暗き
巷に入り、楼上の
木?に干したる敷布、
襦袢などまだ取入れぬ人家、?髭?き
?太教徒の
翁が
?前に
?みたる居酒屋、一つの
梯は直ちに
楼に?し、他の梯は
窖住まひの
?冶が家に通じたる?家などに向ひて、
凹字の形に引?みて立てられたる、此三百年前の を望む?に、心の恍惚となりて?し?みしこと?度なるを知らず。
今この?を?ぎんとするとき、
?したる寺?の扉に倚りて、声を?みつ?泣くひとりの
少女あるを?たり。年は十六七なるべし。
被りし
巾を?れたる?の色は、薄きこがね色にて、着たる衣は垢つき?れたりとも?えず。我足音に?かされてかへりみたる
面、余に?人の?なければこれを写すべくもあらず。この青く清らにて物?ひたげに
愁を含める
目の、半ば露を宿せる?き
睫毛に
掩はれたるは、何故に一?したるのみにて、用心深き我心の底までは?したるか。
彼は
料らぬ深き?きに
遭ひて、前後を?みる
遑なく、こ?に立ちて泣くにや。わが臆病なる心は
の情に打ち?たれて、余は?えず
?に倚り、「何故に泣き玉ふか。ところに
?累なき
外人は、
却りて力を借し易きこともあらん。」といひ?けたるが、我ながらわが大胆なるに
呆れたり。
彼は?きてわが黄なる面を打守りしが、我が真率なる心や色に
形はれたりけん。「君は善き人なりと?ゆ。彼の如く
酷くはあらじ。
又た我母の如く。」?し涸れたる?の泉は又溢れて?らしき
?を流れ落つ。
「我を救ひ玉へ、君。わが?なき人とならんを。母はわが彼の言?に?はねばとて、我を打ちき。父は死にたり。
明日は葬らでは

はぬに、家に一?の
?だになし。」
?は
欷?の声のみ。我
眼はこのうつむきたる少女の
?ふ
?にのみ注がれたり。
「君が
家に送り行かんに、
先づ心を
?め玉へ。声をな人に?かせ玉ひそ。こ?は往来なるに。」彼は物?するうちに、?えず我肩に倚りしが、この?ふと
?を
?げ、又始てわれを?たるが如く、?ぢて我?を?びのきつ。
人の?るが?はしさに、早足に行く少女の?に附きて、寺の筋向ひなる大?を入れば、欠け?じたる石の梯あり。これを上ぼりて、四?目に腰を折りて潜るべき程の?あり。少女は

びたる?金の先きを
捩ぢ曲げたるに、手を?けて?く引きしに、中には
咳枯れたる
老?の声して、「
?ぞ」と?ふ。エリス?りぬと答ふる?もなく、?をあら?かに
引?けしは、半ば
白みたる?、
?しき相にはあらねど、?苦の痕を
?に印せし面の老?にて、古き の衣を着、?れたる上靴を
穿きたり。エリスの余に会?して入るを、かれは待ち兼ねし如く、?を
?しくたて切りつ。
余は?し茫然として立ちたりしが、ふと
油?の光に透して?を?れば、エルンスト、ワイゲルトと
漆もて?き、下に仕立物?と注したり。これすぎぬといふ少女が父の名なるべし。内には言ひ争ふごとき声?えしが、又静になりて?は再び明きぬ。さきの老?は
におのが?礼の振舞せしを
?びて、余を迎へ入れつ。?の内は
厨にて、
右手の低き

に、
真白に洗ひたる麻布を?けたり。
左手には粗末に?上げたる?瓦の
?あり。正面の一室の?は半ば?きたるが、内には
白布を掩へる
?床あり。伏したるはなき人なるべし。?の?なる?を?きて余を?きつ。この?は
所?「マンサルド」の街に面したる
一?なれば、天井もなし。隅の屋根?より

に向ひて斜に下れる
梁を、?にて?りたる下の、立たば
?の
支ふべき?に?床あり。中央なる机には美しき
?を?けて、上には?物一二?と
写真帖とを
列べ、
陶瓶にはこ?に似合はしからぬ
?高き花束を生けたり。そが
傍に少女は
羞を?びて立てり。
彼は
?れて美なり。
乳の如き色の?は?火に映じて
微?を
潮したり。手足の
?く

なるは、?家の
女に似ず。老?の
室を出でし?にて、少女は少し
?りたる言?にて云ふ。「?し玉へ。君をこ?まで?きし心なさを。君は善き人なるべし。我をばよも憎み玉はじ。明日に迫るは父の
葬、たのみに思ひしシヤウムベルヒ、君は彼を知らでやおはさん。彼は「ヰクトリア」座の
座?なり。彼が抱へとなりしより、早や
二年なれば、事なく我等を助けんと思ひしに、人の?に附けこみて、身?手なるいひ?けせんとは。我を救ひ玉へ、君。金をば薄き?金を
析きて?し参らせん。
?令我身は
食はずとも。それもならずば母の言?に。」彼は?ぐみて身をふるはせたり。その?上げたる
目には、人に
否とはいはせぬ媚?あり。この目の?きは知りてするにや、又自らは知らぬにや。
我が?しには二三「マルク」の あれど、それにて足るべくもあらねば、余は をはづして机の上に置きぬ。「これにて一?の急を
凌ぎ玉へ。?屋の使のモンビシユウ街三番地にて太田と?ね
来ん折には?を取らすべきに。」
少女は?き感ぜしさま?えて、余が
辞?のために
出したる手を唇にあてたるが、はら/\と落つる?き
?を我手の
背に
?ぎつ。
?呼、何等の?因ぞ。この恩を?せんとて、自ら我
?居に
来し少女は、シヨオペンハウエルを右にし、シルレルを左にして、
?日兀坐する我 の
下に、一?の名花を?かせてけり。この?を始として、余と少女との
交?く繁くなりもて行きて、同?人にさへ知られぬれば、彼等は
速了にも、余を
以て色を舞?の群に
?するものとしたり。われ等
二人の?にはまだ
痴
なる のみ存したりしを。
その名を
斥さんは
?あれど、同?人の中に事を好む人ありて、余が
屡
芝居に出入して、女?と交るといふことを、官?の
?に?じつ。さらぬだに余が
?る学?の
岐路に走るを知りて憎み思ひし官?は、遂に旨を公使?に?へて、我官を免じ、我?を解いたり。公使がこの命を?ふる?余に
?ひしは、
御身若し即?に?に?らば、路用を?すべけれど、若し?こ?に在らんには、公の助をば仰ぐべからずとのことなりき。余は一?日の?予を?ひて、とやかうと思ひ?ふうち、我生涯にて
尤も悲痛を?えさせたる二通の?状に接しぬ。この二通は殆ど同?にいだし?ものなれど、一は母の自?、一は?族なる
某が、母の死を、我がまたなく慕ふ母の死を?じたる
?なりき。余は母の?中の言をこ?に反覆するに堪へず、?の迫り来て?の
?を妨ぐればなり。
余とエリスとの交?は、この?までは
余所目に?るより清白なりき。彼は父の?きがために、充分なる
教育を受けず、十五の?舞の?のつのりに?じて、この?づかしき
?を教へられ、「クルズス」果て?後、「ヰクトリア」座に出で?、今は?中第二の地位を占めたり。されど?人ハツクレンデルが当世の奴?といひし如く、はかなきは舞?の身の上なり。薄き?金にて?がれ、昼の温?、夜の舞台と
?しく使はれ、芝居の化?部屋に入りてこそ?粉をも?ひ、美しき衣をも?へ、?外にてはひとり身の衣食も足らず?なれば、?腹からを?ふものはその辛苦
奈何ぞや。されば彼等の仲?にて、
?しき限りなる?に
堕ちぬは
稀なりとぞいふなる。エリスがこれを

れしは、おとなしき性?と、 ある父の守?とに依りてなり。彼は幼き?より物?むことをば
流石に好みしかど、手に入るは卑しき「コルポルタアジユ」と唱ふる?本屋の小?のみなりしを、余と
相?る?より、余が借しつる?を?みならひて、?く趣味をも知り、言?の
?をも正し、いくほどもなく余に寄するふみにも
?字少なくなりぬ。か?れば余等二人の?には先づ?弟の交りを生じたるなりき。我が不?の免官を?きしときに、彼は色を失ひつ。余は彼が身の事に?りしを包み?しぬれど、彼は余に向ひて母にはこれを秘め玉へと云ひぬ。こは母の余が学?を失ひしを知りて余を
?んぜんを恐れてなり。
?呼、
委くこ?に写さんも要なけれど、余が彼を
?づる心の
俄に?くなりて、遂に?れ?き中となりしは此折なりき。我一身の大事は前に
横りて、
洵に危急存亡の
秋なるに、この
行ありしをあやしみ、又た
?る人もあるべけれど、余がエリスを?する情は、始めて相?し?よりあさくはあらぬに、いま我
数奇を?み、又 を悲みて伏し沈みたる面に、
?の毛の解けてか?りたる、その美しき、いぢらしき姿は、余が悲痛感慨の刺激によりて常ならずなりたる を射て、恍惚の?にこ?に及びしを
奈何にせむ。
公使に?せし日も近づき、我
命はせまりぬ。このま?にて?にかへらば、学成らずして?名を?ひたる身の浮ぶ?あらじ。さればとて留まらんには、学?を得べき手だてなし。
此?余を助けしは今我同行の一人なる相 吉なり。彼は?京に在りて、既に天方伯の秘?官たりしが、余が免官の官?に出でしを?て、某新 の
?に?きて、余を社の通信?となし、
伯林に留まりて
政治学芸の事などを?道せしむることとなしつ。
社の?酬はいふに足らぬほどなれど、
?家をもうつし、
午餐に往く
食店をもかへたらんには、
微なる暮しは立つべし。
?角思案する程に、心の?を
?はして、助の?をわれに投げ?けしはエリスなりき。かれはいかに母を?き?かしけん、余は彼等?子の家に寄寓すること?なり、エリスと余とはいつよりとはなしに、有るか?きかの?入を合せて、?きがなかにも?しき月日を送りぬ。
朝の


果つれば、彼は温?に往き、さらぬ日には家に留まりて、余はキヨオニヒ街の?口せまく奥行のみいと?き休息所に
赴き、あらゆる新?を?み、 取り出で?彼此と材料を集む。この
截り?きたる引

より光を取れる室にて、定りたる
?なき
若人、多くもあらぬ金を人に借して己れは?び暮す老人、取引所の?の隙を
?みて足を休むる
商人などと
臂を?べ、冷なる
石卓の上にて、忙はしげに?を走らせ、小をんなが持て来る
一?の


の
冷むるをも?みず、明きたる新?の き板ぎれに

みたるを、
となく?け
?ねたるかたへの壁に、いく度となく
往来する日本人を、知らぬ人は何とか?けん。又一?近くなるほどに、温?に往きたる日には返り
路によぎりて、余と
?に店を立出づるこの常ならず?き、
掌上の舞をもなしえつべき少女を、怪み?送る人もありしなるべし。
我学?は
荒みぬ。屋根?の一?微に燃えて、エリスが よりかへりて、
椅に寄りて?ものなどする?の机にて、余は新?の原稿を?けり。昔しの法令条目の枯?を?上に
?寄せしとは殊にて、今は活?々たる政界の??、
文学美?に?る新?象の批?など、彼此と?びあはせて、力の及ばん限り、ビヨルネよりは?ろハイネを学びて思を?へ、?々の
文を作りし中にも、引?きて
?廉一世と
?得力三世との
崩
ありて、新帝の即位、ビスマルク侯の?退
如何などの事に就ては、
故らに
?かなる?告をなしき。さればこの?よりは思ひしよりも忙はしくして、多くもあらぬ を
?き、旧?をたづぬることも?く、大学の籍はまだ
?られねど、?金を?むることの?ければ、唯だ一つにしたる?筵だに往きて?くことは稀なりき。
我学?は荒みぬ。されど余は?に一?の を?じき。そをいかにといふに、
凡そ民?学の
流布したることは、欧洲?国の?にて独逸に
若くはなからん。?百?の新 ?に散?する には
?る高尚なるもの多きを、余は通信?となりし日より、
曾て大学に繁く通ひし折、?ひ得たる一?の眼孔もて、?みては又?み、写しては又写す程に、今まで一筋の道をのみ走りし知?は、
自ら?括的になりて、同?の
留学生などの大かたは、?にも知らぬ境地に到りぬ。彼等の仲?には独逸新?の社?をだに善くはえ?まぬがあるに。
明治廿一年の冬は来にけり。
表街の人道にてこそ
沙をも
?け、
※[#「金+
のつくり」、161-下-29]をも?へ、クロステル街のあたりは
凸凹坎
の?は?ゆめれど、表のみは一面に?りて、朝に?を?けば?ゑ
?えし雀の落ちて死にたるも哀れなり。
室を温め、?に火を焚きつけても、壁の石を?し、衣の?を
穿つ北欧?巴の寒さは、なか/\に堪へがたかり。エリスは二三日前の夜、舞台にて卒倒しつとて、人に
扶けられて?り来しが、それより心地あしとて休み、もの食ふごとに吐くを、
?阻といふものならんと始めて心づきしは母なりき。?呼、さらぬだに
?束なきは我身の行末なるに、若し
真なりせばいかにせまし。
今朝は日曜なれば家に在れど、心は?しからず。エリスは床に
?すほどにはあらねど、
小き?炉の
畔に椅子さし寄せて言?
寡し。この 口に人の声して、程なく
庖厨にありしエリスが母は、?便の?状を持て来て余にわたしつ。?れば えある相?が手なるに、?便切手は
普?西のものにて、消印には
伯林とあり。
?りつ?も
披きて?めば、とみの事にて
?め知らするに由なかりしが、
昨夜こ?に着せられし天方大臣に附きてわれも来たり。伯の
汝を?まほしとのたまふに
疾く来よ。汝が名誉を恢?するも此?にあるべきぞ。心のみ急がれて用事をのみいひ
遣るとなり。?み
?りて茫然たる面もちを?て、エリス云ふ。「故?よりの文なりや。?しき
便にてはよも。」彼は例の新?社の?酬に?する?状と思ひしならん。「否、心にな?けそ。おん身も名を知る相?が、大臣と?にこ?に来てわれを呼ぶなり。急ぐといへば今よりこそ。」
かはゆき独り子を出し遣る母もかくは心を用ゐじ。大臣にまみえもやせんと思へばならん、エリスは病をつとめて起ち、
上襦袢も?めて白きを撰び、丁?にしまひ置きし「ゲエロツク」といふ二列ぼたんの服を出して着せ、襟?りさへ余が?めに手づから?びつ。
「これにて?苦しとは
?れも得言はじ。我?に向きて?玉へ。
何故にかく不?なる面もちを?せ玉ふか。われも
?共に行かまほしきを。」少し
容をあらためて。「否、かく衣を更め玉ふを?れば、何となくわが?太郎の君とは?えず。」又た少し考へて。「
?令富?になり玉ふ日はありとも、われをば て玉はじ。我病は母の
宣ふ如くならずとも。」
「何、富?。」余は微笑しつ。「
政治社会などに出でんの望みは?ちしより
?年をか?ぬるを。大臣は?たくもなし。唯年久しく?れたりし友にこそ逢ひには行け。」エリスが母の呼びし一等「ドロシユケ」は、?下にきしる雪道を

の下まで来ぬ。余は手袋をはめ、少し?れたる外套を背に
被ひて手をば通さず帽を取りてエリスに接吻して
楼を下りつ。彼は?れる

を明け、乱れし?を
朔?に吹かせて余が?りし?を?送りぬ。
余が?を下りしは「カイゼルホオフ」の入口なり。?者に秘?官相?が室の番号を?ひて、久しく踏み?れぬ大理石の
?を登り、中央の柱に「プリユツシユ」を被へる「ゾフア」を据ゑつけ、正面には?を立てたる前房に入りぬ。外套をばこ?にて脱ぎ、
廊をつたひて室の前まで往きしが、余は少し
踟
したり。同じく大学に在りし日に、余が品行の方正なるを激?したる相?が、けふは
怎なる面もちして出迎ふらん。室に入りて相?して?れば、形こそ旧に比ぶれば肥えて
逞ましくなりたれ、依然たる快活の?象、我失行をもさまで意に介せざりきと?ゆ。?後の情を?叙するにも
遑あらず、引かれて大臣に?し、委托せられしは独逸?にて?せる文?の急を要するを せよとの事なり。余が文?を受?して大臣の室を出でし?、相?は?より来て余と
午餐を共にせんといひぬ。
食卓にては彼多く?ひて、我多く答へき。彼が生路は
概ね平滑なりしに、
数奇なるは我身の上なりければなり。
余が胸臆を?いて物?りし不幸なる を?きて、かれは屡

?きしが、なか/\に余を
?めんとはせず、却りて他の凡庸なる?生?を?りき。されど物?の
?りしとき、彼は色を正して
?むるやう、この一段のことは
素と生れながらなる弱き心より出でしなれば、今更に言はんも甲斐なし。とはいへ、学?あり、才能あるものが、いつまでか一少女の情にか?づらひて、目的なき
生活をなすべき。今は天方伯も唯だ独逸?を利用せんの心のみなり。おのれも
亦伯が当?の免官の理由を知れるが故に、
?て其成心を?かさんとはせず、伯が心中にて
曲庇者なりなんど思はれんは、朋友に利なく、おのれに?あればなり。人を
?むるは先づ其能を示すに
若かず。これを示して伯の信用を求めよ。又彼少女との は、?令彼に?ありとも、?令情交は深くなりぬとも、人材を知りてのこひにあらず、 といふ一?の惰性より生じたる交なり。意を?して断てと。
是れその
言のおほむねなりき。
大洋に
舵を失ひしふな人が、
?なる山を望む如きは、相?が余に示したる前途の
方?なり。されどこの山は?ほ重?の?に在りて、いつ往きつかんも、否、果して往きつきぬとも、我中心に?足を与へんも定かならず。?きが中にも?しきは今の
生活、?て?きはエリスが?。わが弱き心には思ひ定めんよしなかりしが、
姑く友の
言に?ひて、この情?を断たんと?しき。余は守る所を失はじと思ひて、おのれに?するものには抗抵すれども、友に?して否とはえ
?へぬが常なり。
?れて出づれば?
面を
?てり。
二重の
玻璃
を?しく?して、大いなる陶炉に火を焚きたる「ホテル」の食堂を出でしなれば、薄き外套を透る午後四?の寒さは殊さらに堪へ?く、
?粟立つと共に、余は心の中に一?の寒さを?えき。
は一夜になし果てつ。「カイゼルホオフ」へ通ふことはこれより?く繁くなりもて行く程に、初めは伯の言?も用事のみなりしが、後には
近比故?にてありしことなどを?げて余が意?を?ひ、折に触れては道中にて人々の失?ありしことどもを告げて打笑ひ玉ひき。
一月ばかり?ぎて、或る日伯は突然われに向ひて、「余は
明旦、
?西?に向ひて出?すべし。
随ひて
来べきか、」と?ふ。余は数日?、かの公?に遑なき相?を?ざりしかば、此?は不意に余を?かしつ。「いかで命に?はざらむ。」余は我?を表はさん。此答はいち早く?断して言ひしにあらず。余はおのれが信じて?む心を生じたる人に、卒然ものを?はれたるときは、
咄嗟の
?、その答の を善くも量らず、直ちにうべなふことあり。さてうべなひし上にて、その
?し?きに心づきても、
?て当?の心虚なりしを掩ひ?し、耐忍してこれを?行すること屡々なり。
此日は の
代に、旅?さへ添へて
?はりしを持て?りて、 の代をばエリスに?けつ。これにて?西?より?り来んまでの
?をば支へつべし。彼は医者に?せしに常ならぬ身なりといふ。?血の
性なりしゆゑ、?月か心づかでありけん。座?よりは休むことのあまりに久しければ籍を除きぬと言ひおこせつ。まだ一月ばかりなるに、かく?しきは故あればなるべし。旅立の事にはいたく心を?ますとも?えず。?りなき我心を厚く信じたれば。
?路にては?くもあらぬ旅なれば、用意とてもなし。身に合せて借りたる?き礼服、新に?求めたるゴタ板の
?廷の?族?、二三?の辞?などを、小「カバン」に入れたるのみ。流石に心?きことのみ多きこの程なれば、出で行く?に残らんも物?かるべく、又停 にて?こぼしなどしたらんには
影?かるべければとて、翌朝早くエリスをば母につけて知る人がり
出しやりつ。余は旅装整へて?を?し、?をば入口に住む靴屋の主人に?けて出でぬ。
?国行につきては、何事をか叙すべき。わが
舌人たる
任?は
忽地に余を
拉し去りて、青?の上に
堕したり。余が大臣の一行に随ひて、ペエテルブルクに在りし?に余を
せしは、巴里 の
?奢を、?雪の
?に移したる王城の
、
故らに
黄?の
?を?つ共なく
点したるに、?星の?章、?枝の「エポレツト」が映射する光、
の
工を尽したる「カミン」の火に寒さを忘れて使ふ?女の扇の?きなどにて、この ?西?を最も?滑に使ふものはわれなるがゆゑに、?主の?に周旋して事を弁ずるものもまた多くは余なりき。
この?余はエリスを忘れざりき、否、彼は日?に
?を寄せしかばえ忘れざりき。余が立ちし日には、いつになく独りにて?火に向はん事の心?さに、知る人の
?にて夜に入るまでもの?りし、疲る?を待ちて家に?り、直ちにいねつ。次の
朝目醒めし?は、?独り?に残りしことを?にはあらずやと思ひぬ。起き出でし?の心?さ、か?る思ひをば、
生?に苦みて、けふの日の食なかりし折にもせざりき。これ彼が第一の?の
略なり。
又程?てのふみは?る思ひせまりて?きたる如くなりき。文をば否といふ字にて起したり。否、君を思ふ心の深き
底をば今ぞ知りぬる。君は
故里に?もしき
族なしとのたまへば、此地に善き世渡のたつきあらば、留り玉はぬことやはある。又我?もて?ぎ留めでは
止まじ。それも

はで
?に?り玉はんとならば、?と共に往かんは易けれど、か程に多き路用を
何?よりか得ん。
怎なる?をなしても此地に留りて、君が世に出で玉はん日をこそ待ためと常には思ひしが、?しの旅とて立出で玉ひしより此二十日ばかり、 の思は日にけに茂りゆくのみ。
袂を分つはた?一瞬の
苦?なりと思ひしは迷なりけり。我身の常ならぬが?くにしるくなれる、それさへあるに、
?令いかなることありとも、我をば
努な?て玉ひそ。母とはいたく争ひぬ。されど我身の?ぎし?には似で思ひ定めたるを?て心折れぬ。わが
?に往かん日には、ステツチンわたりの?家に、?き?者あるに、身を寄せんとぞいふなる。?きおくり玉ひし如く、大臣の君に重く用ゐられ玉は?、我路用の金は?も角もなりなん。今は
只管君がベルリンにかへり玉はん日を待つのみ。
?呼、余は此?を?て始めて我地位を明?し得たり。?かしきはわが
?き心なり。余は我身一つの?退につきても、また我身に?らぬ
他人の事につきても、?断ありと自ら心に?りしが、此?断は?境にのみありて、逆境にはあらず。我と人との を照さんとするときは、?みし胸中の?は?りたり。
大臣は既に我に厚し。されどわが近眼は唯だおのれが尽したる?分をのみ?き。余はこれに未来の望を?ぐことには、神も知るらむ、?えて
想到らざりき。されど今こ?に心づきて、我心は?ほ冷然たりし
?。先に友の?めしときは、大臣の信用は屋上の
禽の如くなりしが、今は
稍
これを得たるかと思はる?に、相?がこの?の言?の端に、本国に?りて後も?にかくてあらば
云々といひしは、大臣のかく
宣ひしを、友ながらも公事なれば明には告げざりし?。今更おもへば、余が?卒にも彼に向ひてエリスとの を?たんといひしを、早く大臣に告げやしけん。
?呼、独逸に来し初に、自ら我本?を悟りきと思ひて、また器械的人物とはならじと誓ひしが、こは足を?して放たれし?の?し羽を?かして自由を得たりと?りしにはあらずや。足の糸は解くに由なし。
曩にこれを
?つりしは、
我某省の官?にて、今はこの糸、あなあはれ、天方伯の手中に在り。余が大臣の一行と?にベルリンに?りしは、
恰も是れ新年の
旦なりき。停 に?を告げて、我家をさして?を
?りつ。こ?にては今も除夜に眠らず、元旦に眠るが?なれば、万?寂然たり。寒さは?く、路上の雪は?角ある?片となりて、晴れたる日に映じ、きら/\と?けり。?はクロステル街に曲りて、家の入口に
?まりぬ。この を?く音せしが、?よりは?えず。
?丁に「カバン」持たせて梯を登らんとする程に、エリスの梯を?け下るに逢ひぬ。彼が一声叫びて我
?を抱きしを?て?丁は呆れたる面もちにて、何やらむ
髭の内にて云ひしが?えず。「善くぞ?り来玉ひし。?り来玉はずば我命は?えなんを。」
我心はこの?までも定まらず、故?を
?ふ念と を求むる心とは、?として?情を?せんとせしが、唯だ此一
刹那、
低徊踟
の思は去りて、余は彼を抱き、彼の
?は我肩に倚りて、彼が喜びの?ははら/\と肩の上に落ちぬ。
「 か持ちて行くべき。」と
?の如く叫びし?丁は、いち早く登りて梯の上に立てり。
?の外に出迎へしエリスが母に、?丁を
?ひ玉へと をわたして、余は手を取りて引くエリスに伴はれ、急ぎて室に入りぬ。
一瞥して余は?きぬ、机の上には白き木?、白き「レエス」などを
堆く?み上げたれば。
エリスは
打笑みつ?これを
指して、「何とか?玉ふ、この心がまへを。」といひつ?一つの木?ぎれを取上ぐるを?れば
襁褓なりき。「わが心の?しさを思ひ玉へ。?れん子は君に似て?き
瞳子をや持ちたらん。この瞳子。?呼、?にのみ?しは君が?き瞳子なり。?れたらん日には君が正しき心にて、よもあだし名をばなのらせ玉はじ。」彼は?を垂れたり。「
?しと笑ひ玉はんが、寺に入らん日はいかに嬉しからまし。」?上げたる目には ちたり。
二三日の?は大臣をも、たびの疲れやおはさんとて
敢て
?らはず、家にのみ?り
居しが、或る日の夕暮使して招かれぬ。往きて?れば待遇殊にめでたく、?西?行の?を?ひ慰めて後、われと共に?にかへる心なきか、君が学?こそわが?り知る所ならね、?学のみにて世の用には足りなむ、滞留の余りに久しければ、?々の?累もやあらんと、相?に?ひしに、さることなしと?きて
落居たりと宣ふ。其?色
辞むべくもあらず。あなやと思ひしが、流石に相?の
言を?なりともいひ?きに、若しこの手にしも
?らずば、本国をも失ひ、名誉を
挽きかへさん道をも?ち、身はこの?漠たる欧洲大都の人の海に葬られんかと思ふ念、心?を
?いて起れり。?呼、何等の特操なき心ぞ、「
承はり
侍り」と
?へたるは。
?がねの
?はありとも、?りてエリスに何とかいはん。「ホテル」を出でしときの我心の?乱は、
譬へんに物なかりき。余は道の?西をも分かず、思に沈みて行く程に、往きあふ の?丁に?度か
叱せられ、?きて?びのきつ。?くしてふとあたりを?れば、?苑の
傍に出でたり。倒る?如くに路の
?の
榻に倚りて、灼くが如く?し、
椎にて打たる?如く?く
?を
榻背に持たせ、死したる如きさまにて をか?しけん。?しき寒さ骨に?すと?えて醒めし?は、夜に入りて雪は繁く降り、帽の
庇、外套の肩には一寸
?も?りたりき。
最早十一?をや?ぎけん、モハビツト、カル?街通ひの?道 の?道も雪に埋もれ、ブランデンブルゲル?の
畔の
瓦斯?は寂しき光を放ちたり。立ち上らんとするに足の?えたれば、?手にて
擦りて、?やく?み得る程にはなりぬ。
足の?びの
?らねば、クロステル街まで来しときは、半夜をや?ぎたりけん。こ?迄来し道をばいかに?みしか知らず。一月上旬の夜なれば、ウンテル、デン、リンデンの酒家、茶店は?ほ人の出入盛りにて
?はしかりしならめど、ふつに?えず。我?中には唯

我は
免すべからぬ罪人なりと思ふ心のみ?ち/\たりき。
四?の屋根?には、エリスはまだ
寝ねずと
?ぼしく、
?然たる一星の火、暗き空にすかせば、明かに?ゆるが、降りしきる?の如き雪片に、
乍ち掩はれ、乍ちまた?れて、?に
弄ばる?に似たり。?口に入りしより疲を?えて、身の?の痛み堪へ?ければ、
?ふ如くに梯を登りつ。
庖厨を?ぎ、室の?を?きて入りしに、机に倚りて
襁褓?ひたりしエリスは振り返へりて、「あ」と叫びぬ。「いかにかし玉ひし。おん身の姿は。」
?きしも
宜なりけり、?然として死人に等しき我面色、帽をばいつの?にか失ひ、?は
蓬ろと乱れて、?度か道にて
跌き倒れしことなれば、衣は泥まじりの雪に

れ、?々は裂けたれば。
余は答へんとすれど声出でず、膝の
?りに
?かれて立つに堪へねば、椅子を
握まんとせしまでは?えしが、その
?に地に倒れぬ。
人事を知る程になりしは
数?の後なりき。 しくて
のみ言ひしを、エリスが
?にみとる程に、或日相?は?ね来て、余がかれに?したる
?末を
?らに知りて、大臣には病の事のみ告げ、よきやうに
?ひ置きしなり。余は始めて、病?に侍するエリスを?て、その?りたる姿に?きぬ。彼はこの数?の内にいたく?せて、血走りし目は?み、灰色の
?は落ちたり。相?の助にて日々の
生?には?せざりしが、此恩人は彼を精神的に?し?なり。
後に?けば彼は相?に逢ひしとき、余が相?に与へし?束を?き、またかの夕べ大臣に?え上げし一?を知り、
俄に座より?り上がり、面色さながら土の如く、「我?太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫び、その?に
僵れぬ。相?は母を呼びて共に
扶けて床に?させしに、?くして醒めしときは、目は直?したるま?にて傍の人をも?知らず、我名を呼びていたく?り、?をむしり、
蒲?を?みなどし、また
遽に心づきたる?にて物を探り
?めたり。母の取りて与ふるものをば
悉く
抛ちしが、机の上なりし襁褓を与へたるとき、探りみて?に押しあて、?を流して泣きぬ。
これよりは?ぐことはなけれど、精神の作用は
殆全く?して、その
痴なること赤?の如くなり。医に?せしに、 なる心?にて急に起りし「パラノイア」といふ
病なれば、治?の なしといふ。ダルドルフの
?狂院に入れむとせしに、泣き叫びて?かず、後にはかの襁褓一つを身につけて、?度か出しては?、?ては
欷?す。余が病?をば?れねど、これさへ心ありてにはあらずと?ゆ。た?をり/\思ひ出したるやうに「?を、?を」といふのみ。
余が病は全く?えぬ。エリスが生ける
?を抱きて
千行の?を
?ぎしは?度ぞ。大臣に随ひて の途に上ぼりしときは、相?と
?りてエリスが母に
微なる
生?を?むに足るほどの?本を与へ、あはれなる狂女の胎内に?し?子の生れむをりの事をも?みおきぬ。
?呼、相 吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我
に一点の彼を憎むこ?ろ今日までも残れりけり。
(明治二十三年一月)